ほんの少しの背伸びから、借金地獄がはじまる

世の中には自己破産をしたり、家を取り上げられる人がいます。しかし、そのほとんどの人々は、別にギャンブル漬けになったこともなければ、何か悪いことをしたわけでもありません。ただ単に自動車やマンションなどの大きな買い物をした際に、ほんの少しだけ背伸びをしてしまったことが原因なのです。たとえば、35歳独身のBさんの場合、10年ほど前から乗っていた中古のセダンを買い換えようと思い足を運んだ販売店に、たまたま新車のスポーツカーが置いてあったことがすべてのはじまりだったのです。

若いころ憧れていたスポーツカー。セールスマンに案内されるまま運転席に乗ってみると「やっぱりカッコいいなぁ」と夢中になってしまいました。スポーツカーの値段は300万円です。当初の予算は200万円だったものの、5年のローンを組めば毎月1万5,000円を追加すれば、買えないこともありません。「よし、こっちのスポーツカーにしよう!」こうしてBさんは「毎月4万5,000円の支払いで5年間で完済する」という契約を結び、スポーツカーを買うことに決めました。

しかし、今から考えてみれば、この「ちょっとの背伸び」がBさんの借金地獄のはじまりであったのです。Bさんの月収は30万円ですが、税金や社会保険料や生命保険料などを差し引かれると25万円に減ってしまいます。ここから毎月4万5,000円を支払った挙句、ガソリン代、保険料、税金、駐車場代など自動車関係だけで総額5万円を支払うことになり、手取りの40%近くがなくなります。

残ったのは15万5,000円ですが、同居している親へ家賃代わりに5万円を支払ったら、残りは10万5,000円になってしまいます。これから5年間というもの。Bさんは月10万5,000円の生活を余儀なくされるのです。そんなBさんに友人が「ビーチに泊りがけで旅行に行こう」と誘ってきました。もちろん10万5,000円では足りないので、Bさんは10万円だけカードローンで借りることにしました。

そしてビーチから帰ってきたら今度はガソリン代や自動車ローンのお金が足りず、またまた10万円を借りる羽目に陥ったのです。こうしてクリスマスパーティーや友人の結婚式に出席する度に10万円ずつ借り入れを増やし、気づいたときには100万円を超えていたのです。Bさんは何も悪いことをしていません。ただ、少しだけ背伸びをしてスポーツカーを買ってしまっただけなのですが、今では大きな借金を抱えて、お金に困った生活を送っている有様です。Bさんが呟きました。「あのとき中古のセダンにしていれば、こんなことにはならなかったのに…」

ライフスタイルを引き上げる際には注意が必要

借金地獄や自己破産というのは、ほんの少し無邪気な背伸びすることからはじまります。Bさんのように200万円のセダンを予定していたのに、300万円のスポーツカーに目移りしてしまうなんて本当によくある話ですよね。そしてスポーツカーヘ目移りしているところへ「毎月1万5,000円だけ、余分に支払うだけですよ!」って畳み掛けられたら大抵の人は買う気にさせられてしまいます。この瞬間こそが借金地獄と自己破産への入り口です。

自動車などの大きな買い物をする際には無邪気な背伸びのつもりだったのに、現実にはライフスタイルを大きく引き上げてしまうことが多いものです。Bさんの場合には、そこから5年間に渡って毎月の給料のうち4万5,000円(+諸経費5万円)の使い道を決めてしまったということになるのです。本来ならば、お給料が上がってからライフスタイルを上げるべきでしたが、実際にはお給料が上がる前からライフスタイルを上げてしまったので、どこかにしわ寄せがやってくるのは当然なのです。

それでもビーチの旅行、クリスマス、結婚式などのどれかを我慢すればいいと思うかもしれません。しかし、人は今あるライフスタイルを引き上げることは簡単にできても引き下げることは容易にはできないものなのです。今まで通りを続けてしまった結果、カードローンを使ってしまったということです。何かの点でちょっとだけライフスタイルで背伸びした場合には他のどこかでライフスタイルを調整する必要があります。

自動車などの大きな買い物では、こうした調整ができなければ、人生の危機に陥ります。そして「健康」であったはずの家計はスポーツカーヘのひと目惚れを境に5年間の「家計の病気」にかかってしまい、カードローンを使った時点で「家計の死」へ近づきます。「経験や思い出は、お金じゃ買えない」なんてテレビのコピーに乗せられて「海外旅行へ行きたいなぁ」「この洋服は素敵だなぁ」「この時計はカッコイイなぁ」を2段抜かしで飛び越えないように。「いまは手持ちのお金がないけどボーナスで払えばいいわ!」なんて考えると、Bさんみたいに後悔することになっちゃいますからね。

人生の目標を実現させるファイナンシャル・プランニング

どうしても欲しいものがある場合、たった1つに目標を絞り込むことが重要です。たとえば、1ヶ月間の海外留学、1年後に控えた結婚、自動車やマンションなど「人生の目標」を1つに絞り込みます。そして、まず、その目標を達成するための費用がいくら必要になり、何年後に実現したいのかを考えます。次に、目標のために用意できる「金額」を計算します。基本的には給料と貯金からいくらまで利用でき、実現時期までに投資を利用して何%増やせるかをシミュレーションして考えます。

最後に「目標の費用」と「用意できる金額」を比べて、お金が余るようであれば問題ありませんが、お金が足りないようであれば、①「目標金額」を引き下げる、②「用意する金額」を増額する、③「実現時期」を先に延ばす、という3つの方法を利用して調整します。

このように「人生の目標」を設定して、それを実現するために「資産状況」を見直すプロセスをファイナンシャル・プランニングと呼びます。そして―つの目標が達成されたら次の目標を設定するという具合に連続させれば、人生は幸せに満ちていて、しかもお金に困らない状況が続きます。Bさんのように自動車を買うことが目標とすれば、懐具合をシミュレーションして、値段を下げる、他の支出を削る、購入時期を延ばす、のどちらかの調整をすれば、目標は実現していたということになります。

— posted by しょういち at 12:31 pm